小説載せる予定が、気がつけば日記の溜まり場。 そんなもんよ。
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『天照し編~最古の救済者~』
2007-08-09-Thu  CATEGORY: 天照し編
お待たせ、したのでしょうか?
今年春に募集が始まり、ただ今選考の最中かと思われる、第二回「ひぐらしのなく頃に」小説大賞。
それに雪嶺一九として送りました(投稿?)作品はふたつ。
ここに載せます『天照し編~最古の救済者~』はギャグ・コメディ部門として発表しました。落選しましたが。


以前もかきましたが、これはかなり字数オーバーしました。書きたい事をかなり削ってなお3000字以上オーバーしており、頭を抱えて、結局展開もがらりと変えて無理矢理収めました。
元々はギャグ部門に送るに相応しい、ていうか一九の趣味がこれでもかってくらいに入ったストーリーでした。え?十分入ってるって?


大幅カットしたのが悔やまれる作品なので、ブログで掲載する時はディレクターズカットと称して字数に捉われずに書き切るぜ!と常々思っていましたので、やってみたいのですが……いい加減卒論に手をつけろと脅されまして、更に他の投稿用の作品にも着手して行きたいものですから、中々時間がないと言うところ。

苦肉の策として、発表用のものをそのまま掲載します。

後々にちゃんとディレクターズカット版を掲載し、自己満足を謀るので、もしも「おもしろいな」と感じていただきましたら、楽しみにお待ち下さい。
感想募集中よ。

では前置きが長くなりましたが、どうぞ。


雪嶺一九版:ひぐらしのなく頃に
『天照し編~最古の救済者~』
 綿流し。この雛見沢村で一番の年中行事で、その日は近隣の村からも人がやってくる程らしい。祭そのものには派手派手しいところは無さそうだが、部活メンバーが向かうところに静寂などは存在しない。墓場でだって運動会をしかねない連中だ。昨日の綿流しの祭りをさぞかし面白おかしく盛り上げたに違いない。
 そう、昨日。現在は綿流しの翌日の、そろそろ昼時。俺が昨日何をしていたのか、本来ならば説明は要らないはずだ。何もなければ俺は確実に祭に参加して、いつものメンバーと大騒ぎをして、今頃学校でその回想なんかをしながらどういう訳か富竹さんの事を思い出したりしているところなのだ。村一番のイベントに参加しないなんて誰が考える?その日に限って風邪にやられてしまうなんて、誰が考えるってんだよ!
 だー!!昨日いきなり雨なんか降るからだ!大事をとって休んでは見たものの、薬を飲んで丸一日寝てしまえばこれだけ元気になるってんなら、多少無理をしても昨日行くべきだった!いや待て、部活には万全の状態で臨まなければ、そもそも今日まで命がなかったかもしれないな。最大の失態は、一番大事な日に風邪をひいた事。お袋は学校に俺が今日休むと伝えているはずだが、こうもピンピンしていては休む気にもなれないし、兎に角学校へ行ってみようという話。
「やあやあ諸君!ご無沙汰である!前原圭一、ただいま到着だ!」
 俺の精一杯のハイテンションに、教室の皆は呆然として迎えてくれた。無理もないか。思いっ切り重役出勤になってるし。
「圭一くん、早かったね……。」
「おうよレナ!おく……ん?」
 遅れちまった、そう言おうとしてつい言葉が止まってしまった。レナは今何を言った?早かったって一体何の話だ?
「圭ちゃん、もしかしてサボった?駄目だよ、他の何をすっぽかしてもいいけど、知恵先生のカレー菜園の世話だけは怠けちゃあ!」
「おい魅音、サボったって……何を言ってるんだ?」
「うん?さっき圭ちゃん出て行く時、当番だからカレー菜園に水をやりに行くーって言ってたじゃん。それにしては早過ぎたからさ、水遣りを口実に使っただけかと思ってね。」
「……?」
 おかしいぞ?俺は今朝から、正確には昨夜からずっと寝込んでいて、今日皆と顔を合わせるのはこの場が初めてだ。それなのに、魅音が言うには……俺はさっきまで教室にいて、ついさっきここを離れ、そして今こうやって戻って来たらしい。魅音だけじゃない。初めに口を開いたレナも、他の皆も、魅音の言う事が正しいと思っている模様。……一体これはどういう事なんだ?
「前原さーん!そろそろ教えて下さいよー。」
「お、岡村君か。教えるって何をだ?」
「とぼけないで下さいよ!昨日の射的屋の武勇伝!さっきから聞いてるのに、ずっと後回しにしてるじゃないですか。」
 さっきから……またか。俺はやはりさっきまでここにいたってのか。それに……
「昨日って、祭の話か?悪いけど、俺は祭には行ってないんだ。別の奴の活躍じゃないか?」
「あー!またそうやってはぐらかすんですかー!」
「まあまあ岡村さん。私達から教えて差し上げますわ。」
「ビリは富竹だったのです。」
「圭一くんがね!こぉ~のぐらいの熊さんを倒してね!レナにプレゼントしてくれたんだよ!だよ!」
「まったく、あれは皆で倒した獲物だってのに、圭ちゃんが美味しいところをぜーんぶ」
「魅ぃは熊に当ててませんです。」
 皆の話す内容が全く掴めない。それでもその話が、祭に俺が部活メンバーとして参加していたという前提の上で話されている事は理解できた。しかし、俺にとっては、風邪でずっと寝込んでいたというのが昨日の事実。俺という人間が同時に二ヶ所で確認されている。
「俺は祭には行ってない……。」
 思わずこぼれた呟きは、声の大きさに反して教室に響き渡ってしまったらしく、クラス中の視線が俺に集中する。
「圭一さんの仰っている意味が分かりませんわ!」
「俺にだって分からねえよ!昨日は風邪で、夕方からは部屋からだって出ちゃいない!レナに祭に行けないって電話したけど、出発した後だったからか繋がらなかったから、証拠は無いけど……でも本当に家に居たんだ!」
 クラスの皆は、互いに顔を向け合っていた。一人二人の証言なら人違いかもしれないが、クラス全員が見間違えるとは考えにくい。ならば尚更俺の話は信じられないだろう。だが俺は確かに、祭りには行ってない……!
「そうそう、お前は祭には行ってない。」
「!!」
 誰か分からない。しかし一人だけ、俺の意見を汲んでくれる相手がいた。俺はそいつの声に聞き覚えがない。男の声だ。後方から聞こえた。だから、ゆっくり振り返る。俺の知らない声ならば、相手は俺の知らない人間だ。しかし、教室に現れるという事から限定できる。俺が知らない人間で、学校に関係のある人間という事は……?俺は後方を振り返り、声の主の顔を見て……!!
「お、お前は!」
 目の前にいたのは、俺だった……!!
「圭ちゃんが二人!?どういう事!?」
「おい魅音!前原圭一はこの俺だ!……やいモノマネ野郎!昨日レナ達と綿流しに行ったってのは、てめえか!?」
 俺も含め、おそらくこの場に居る全員が少なからず動揺しているはずだ……ただ一人を除いて。おれの目の前にいる偽者は頭にくる様な微笑をたたえ、どう見たって動揺しているとは思えない。
「いかにもいかにも。昨夜レナ達と祭へ繰り出し!射的屋で熊を落とし!皆の注目を集めたのはこの俺、前原圭一……」
「ふざけるな!前原圭一はこの俺だ!てめえは何者だ!名を名乗りやがれぇっ!」
「なんだなんだ?名前なら名乗ったぜ?俺はお前さ。お前の一部さ。だが、まあいい。ならば改めて名乗っておこう。K!これから俺を呼ぶ時はそう呼べ!」
「俺の、一部……?」
「ねえ!えっと、そっちの圭一くん。どうしてこっちの圭一くんの代わりに、レナ達と一緒にお祭に行ったのかな、かな?」
 誰もが混乱から立ち直れない中、レナがいち早くKの狙いを確かめる。
「おいおい、質問が多過ぎるぜ?俺は普段皆の質問疑問に偽りなく答えるような奴だったか?」
 当たり前だ!俺は正直者だぜ!
「そっちの圭一くん、質問に答えないというなら、レナ達は圭一くんを信用しないよ。こっちの圭一くんは正直に話してくれた。」
 レナは笑顔だ。考えてもみれば、別に俺の姿で悪さをした訳ではないんだよな。本当の事を話さないという点では確かにレナはKを信用していないだろうが、かといってそれ以上に悪く思っている訳でもなさそうだ。
「わかったわかった。泣く子とレナには勝てねえや。しかしだ。俺だって祭に行きたかったんだぜ?俺はそいつの代わりとしていったんじゃねえ。俺の姿で祭に行ったんだ。文句はないだろ?」
「だったらてめえが勝手に行きゃいいだろ!俺を騙って行く事はねえだろうが!」
「……Kが楽しく騒いでいる間に、圭一は寂しく家に閉じこもっていて、かわいそかわいそなのです。」
 うぐ……寂しくなんかないもん。
「よくよく考えてもみろよ?皆だって、いつものヘタレた圭一より、昨日の大活躍の俺の方に心魅かれたんじゃないのか?」
 Kはクラスの皆に向き直る。な、なんだ?皆の様子がおかしいぞ?心なしか、同意の声も聞こえてくるような……。
「ちょっと皆!騙されちゃ駄目だって!ガサツで色んなブレーキが壊れてる圭ちゃんの方がよっぽど愉快で魅力的だよ!」
 うごっ!?
「大体、射的ごときで得意にならないで頂きたいですわ!あんなお遊びに夢中になって!幼稚にも程がありましてよ!」
 ぐはっ!それをお前が言うのか沙都子!
「……うれしくないところばかり認められて、かわいそかわいそなのです。なでなで。」
「うう、梨花ちゃんは俺の味方なんだな?」
「み~☆ボクは弱い者の味方なのですよ。」
「そっか……ってつまり、Kより俺の方が弱いって言いたいのか?」
「にぱ~☆」
 どいつもこいつもォォォォォ!!はっ、レナ!レナは俺を信じてくれるよな?レナはさっきから微動だにせず、ずっとKを見遣っている。
「なんだなんだ?俺の顔がそんなに珍しいかよ。いつも顔を合わせてただろ?」
「……どっちが本物でどっちが偽者か、そんなのどうだっていい。でも、圭一くんはレナ達の仲間。いくら仲間であっても、圭一くんを馬鹿にしようとするなら、レナはあなたの味方にはならない。」
「そーだ!圭ちゃんに謝れ出来の良い方の圭ちゃん!」
「答えて下さいまし!意地汚い方の圭一さんをどうしようというおつもりですの!」
 ……俺を一番馬鹿にしてるのはこいつらだと思うのだが……さっきから頭撫でられてるし。
「いやいや。俺はこれまで前原圭一として生きてきた。これからもそうしたい。それはそちらも同じ。しかし同じ人間は一人だけで良い。だったら、本物として相応しい方が前原圭一を名乗れば良いと思ってね。」
「ちょっと待て!答えになってねえぞ!」
「どうやら、予定より随分早く圭ちゃんが目覚めてしまって、今のところはどうしようも出来ないって感じらしいね、うん。」
「って何で魅音にはそんな事分かったんだよ。」
「向こうの圭ちゃんの顔に出てたもん。」
「単純なところまでそっくりだというのも哀れですわね……。」
「そっちの圭一も、ふぁいと、おーなのですよ。にぱ~☆」
「……。」
 Kは明らかに言葉を失っている。ていうかそんなに俺、考えてる事顔に出るのか?Kの顔は俺も見ていたんだが。
「Kだっけ?今のところは、どういう段階なワケ?目下のところの目的は何?」
「なかなか悪くない質問だが、俺が答ると本気で思ってるのか?」
「えっと、人と鬼の混血、血のコーディネイトを受けて誕生した雛見沢の村人達を、あおきせいじょうなるせかいの為に討ち滅ぼそうとしているんですの?……顔の割に難しい単語が出て来ますわね。」
 あいつ今そんな顔してたのか?ていうかそれどんな顔だー!!?
「それより、これはとんでもない計画なのです。圭一の真っ黒なお腹もちゃんとそっくりだったのです。」
 まったくもって緊張感が感じられない上に一言余計だぜ我らが梨花ちゃん。
「これはこれは……まさかこんなに、こんなに早く計画が露見しちまうなんてな。」
 うん、俺としてもびっくりだ。自分がこんなに隠し事が出来ない人間だったとは。
「やれやれ。ああその通りだ!俺達の望みは、村にまとわりつく下らない柵(しがらみ)からの脱却!本当の自由!真のフリーダム!それが我らが主、オヤシロさまが下した命だ!」
「……!オヤシロさまだとっ!?」
 馬鹿な……村の守り神が、どうして俺の偽者の姿で現れるってんだ!
「へ、偽者の分際で大きく出やがったな!まさかこれが今年のオヤシロさまの祟りって事か!?」
 その言葉に反応して、クラス中のどよめきが一際大きくなる。……迂闊だったか。皆の前でこの単語を出してしまうなんて。しかし、Kが出現したのは昨夜、綿流しの夜。可能性は……きわめて高い!
「圭一。祟りなんてありませんのです。あるとしても、オヤシロさまとは関係ないのです。」
 ……え?強い口調で割り込んできたのは梨花ちゃんだった。途端にKの目が開く。
「そうだそうだ!梨花ちゃんの言う通りだぜ皆!連続怪死事件はもう起きない!何も怖がる事なんてない!」
 Kの声がクラス中に響く。……もう起きないって?やはりこいつ、何か知っている!
「圭一くん!皆もあんな人の言う事なんて信じないで!あれは、あいつの正体は……!!」
 レナが叫ぶ隙に、Kは身を翻し……しまった!富田君と岡村君が捕まった!
「お二人に何をなさるおつもりですの!」
 二人の目からは涙が……!くそっ!俺の仲間に、何をしやがるっ!
「おいおい、俺は何もしちゃいない。ただ魂をぶつけてやっただけさ。同志には言葉は要らない。互いに情熱を確かめ合うだけで、俺達は同志だ!」
「「K万歳!オヤシロさまばんざぁぁぁい!」」
 どうしたってんだ!富田君も岡村君も、Kを讃えている……?
「まさか、あっちの圭ちゃんに捕まると、洗脳されちゃうって事?」
「なんだなんだ人聞きの悪い。俺達は思いの丈を分かち合っただけだ。自分のやりたいようにやる!なりたいものになる!それこそが自由!それこそが雛見沢に本当に必要なものなんだ!がんじがらめのしきたりなんかじゃない!そんなもの、オヤシロさまが望んだ事じゃない!昔の村人が勝手に作った、間違った解釈なんだ!!皆、今こそ耳を澄ませ!本当の守り神の声を聞くんだ!」
「「K万歳!オヤシロさまばんざぁぁぁい!」」
 ……確かにこの村には、古くから厳しい戒律で窮屈な生活を強いられてきた過去がある、とどこかで聞かされた気がする。だが、今はもう昭和の世の中。オヤシロさまの思考が柔軟ならば、Kの言う通り、オヤシロさまも戒律を捨てて自由になる事を村人に求めているというのも頷けないではないが……。
「さあさあ圭一!今のお前は確かに幸せだ。だがそれで満足か?ちっぽけな幸せに妥協していないか!?俺はお前自身だ。だから分かる!お前の本心が!自分の胸に手を当てて考えろ!お前がやりたいのは、生きたいのは、本当にそんな毎日なのかっ!!?」
「俺の……やりたい事……?」
 K。奴は俺のコピーだ。奴は、自分でも気付いていないような俺の本心を知っているのか?……Kは柔和な笑顔でゆっくりと、俺に歩み寄ってくる。
「偽者め!圭一さんには近付かせ……うっ!」
 富田君と岡村君が、俺と他の皆との間に壁を作る。俺とKの二人だけが、教室の中心に取り残された。……俺も知らない自分の本心……それを知るKが近寄ってくる。俺は動く事が出来ないのだった。……その時!廊下側の窓から何かの包みが投げ込まれたかと思うと、空中で勢いよく解け、大量の粉を振り撒いた!
「ゲホゲホッ!こ、この粉は何だっ!?うおっ!目が!目がアッ!!」
「あまりに騒がしいようですからお仕置きです。このスパイスは私のスペシャルブレンド。味のしつこさなら並ぶものはありませんよ。」
 知恵先生?そうか、騒ぎを聞きつけて……ヘクシ!俺も目が開けられない!ところで、なんで先生はこのスパイスの中で平気なんだ?
「カレーを極めるとは、こういう事でもあるのです!まったく普段からカレーに親しんでいれば、この程度のスパイスに苦しむなどないというのに……。それより委員長、今日の部活は屋外でお願いしますね。教室はこれから……先生が『掃除』しようと思いますので。」
 そりゃあこんなスパイス、先生じゃなきゃ掃除出来ないし、第一ぶち撒けたのは先生っぽいんだし当然だ、とか考えていると誰かに肩を掴まれ、そのまま担ぎ上げられる。そいつは俺を担いだまま窓から外へ飛び出した。この息遣い、魅音か?
「ひえ先生も何かをひってゆみたいだにぇ、ひぇ、へっくし!」
「Kの事は知恵に任せるとして、これからどうしますですか?」
 くしゅん!……梨花ちゃんはどうして平気なんだ?
「ボクなら、辛いものは平気なのですよ。にぱ~☆」
「私が先生にお教えしたトラップですもの。内緒で回避方法くらい考えてありましてよ!」
「駄目なんだよ?皆ちゃんとカレー食べなきゃ!」
 本当にそんなんで耐性が出来るのだろうか……だんだんと目が開けられるようになってくる。
「圭一!それに皆!」
「あ、あれ圭一くんのお父さんじゃないかな!かな!」
 涙で視界が歪むのでよく見えないが、確かに今のは親父の声のような。手で涙を拭おうとしたところ、手についていたらしいスパイスが舞い上がり、魅音ともども大ダメージで逆効果だった。とにかく、親父のもとへ急ごう。
「うわ、先生アレを使ったか……勿体無い。っと、さあ皆、この車に乗り込んで!」
 分からない事だらけのまま車に乗り込む俺達。分かった事といえば、親父もスパイス平気だったという事だけだ。

 親父が連れてきたのは、何と俺の家、ある扉の前。その先には親父のアトリエがあるはずだが、なんだってこんなところに連れて来られたのだろう。
「生きている内にお前とこの戸をくぐるとはな……。」
「な、何の事だよ父さん!」
「圭一。父さんは画家だが……ただの画家じゃないんだ。この扉をくぐれば、圭一は父さんを信用しなくなるかもしれない。しかし、圭一を奴らから確実に守るには、これしかないんだ。分かってくれ!」
「奴らって、結局おじさまも何か知ってるんでしょー?勿体つけないで教えて下さいよー。」
 ……図々しい物言いだが、魅音の言う通りだ。
「分かった。皆聴いて欲しい。奴らの正体は」
「宇宙人です。」
 親父の言葉は、どう言う訳かレナに引き継がれた。
「レナちゃん、それは何処で聞いたんだい?」
「三四さんがレナに教えてくれました。奴らはこの村に目をつけた。そして村人のコピーを生み、レナ達の信頼関係を内側から利用して村を丸ごと乗っ取ろうとしている!」
 …………はぁ?呆れているのは他の皆も同じだが、レナの目はマジだ。そしてもう一人、親父も同様だった。
「レナちゃん!三四さんというのは、鷹野三四の事なのかい!?」
「……そうですけど……それがどうしたんですか?」
 親父は何かを考えるような仕草を見せ、アトリエの扉に手を掛けた。
「続きは中で話そう。その方が信じてもらえるだろうからね。」

 それまでずっとアトリエだと信じていた場所には、大型の機械が沢山並べられていた。これではまるで……
「まるで秘密基地ですわねえ。」
「ああ。実は父さん、正義の味方なんだ。地位で言えば中堅になるのかな。でもサークルでは一番偉いんだぞ?ん?どうした圭一。」
 どうしたもこうしたもない。初めから真実味のない話ではあったけど、こうも唐突にそんな告白されても反応に困るというものだ。
「それより父さん、話を続けてよ。結局Kの正体は何なの?」
「まあ最後まで聴きなさい。父さん達の様な実働部隊は各地へ直接鎮圧等に向かうんだが、情報収集や勢力調査の分野で貢献してくれる人もいるんだ。その中の一人に、タカノ先生という人がいた。父さんが最も尊敬する人達の中の一人でもある。もう十年以上前になるが、先生はある現象について調べ始めた。それが……雛見沢村の、『鬼隠し』だ。」
「……!」
 鬼隠し。この村に伝わる風習だ。そしてそれは今、俺に最悪の事態を連想させた。
「あの、おじさま……その、タカノ先生という人はもしかして……鬼隠しに、遭ってしまった……?」
「……。」
 レナの質問に返答はなかったが、この沈黙は肯定以外の意味を持たなかった。
「先生はもう居ない。しかしそれでも、父さんの中の先生への尊敬の思いは変わらないんだ。鬼隠しに対する先生の仮説はあまりに衝撃的で、当時の組織では動けなかったんだ。仮説の域を出ない、というのもあってな……。もしもあの時、父さんに今ぐらいの力と勇気があれば、すぐにでも先生のもとへ駆けつけた。助けられたかもしれないんだ……。勿論、鬼隠しの正体が、先生の睨んだ通りだとは限らない。だがもし先生の考えが正しいのなら、そしてそれによって先生が消されたのならば、絶対に暴かなければならないんだ!」
「父さん……。」
 俺は、親父の言う先生って人は知らない。しかし、父さんが心から尊敬している人だろう事は察しがついた。しかしだからこそ、先生の言葉を疑わない、先生を奪った相手を見つけたいと思う気持ちの深さは計り知れない。
「すまない圭一。父さんの仕事の都合に付き合わせて。」
「引っ越しの事なら気にしてないよ。戸惑う事もあったけど、ここへ来て数週間で、もう多くの事を学んだ。感謝してるくらいさ。」
 俺は仲間達の顔を順番に確かめていった。……梨花ちゃんの顔色が優れない。
「……伊知郎は、オヤシロさまを悪者扱いするのですか?」
 そうか。梨花ちゃんはオヤシロさまの生まれ変わりと噂されている。オヤシロさまを悪く言われて面白いはずはない。
「梨花ちゃん違うの。悪いのは全部宇宙人なんだよ、だよ。オヤシロさまの名を騙り、勝手に鬼隠しを起こしていた大罪……許せない!」
「本当の敵はオヤシロさまではない……しかし宇宙人という証拠もない。それは三四ちゃんが、この村の事を詳しく調べる前に作った仮説なんだ。」
「ん?三四ちゃんって……父さん、鷹野さんの事知ってるの?」
 知っているどころか、かなり親しそうな呼び方に聞こえる。父さんは引っ越して外出もしないから、診療所にも縁が無さそうなのだが……さも当然の様に答えてくれた。
「そりゃあ、先生の娘さんに当たるからな。」
 なるほど、それならば……面識の有無は分からないにしろ、父さんが鷹野さんを知っていたのも頷ける。だが待てよ?じゃあ、まさか鷹野さんが雛見沢に居るのも……?
「ああ。血の繋がりはなくとも、彼女も先生を尊敬していた。組織には所属していなかったが、この村に赴き、村の伝承なども併せて先生の仮説を検討し、組織の上層部にも報告してくれていたんだが……。」
 父さんの、いや……俺以外の皆の顔が曇る。
「圭ちゃんは、昼前まで眠らされてたんだよね……。」
「おい……まさか!鷹野さんまでが、その……やられたってのかよ!」
 頼むから、冗談ならそろそろ教えてくれよ!誰でも良い!早く俺の冗談を否定してくれ!「嘘だ」と言ってくれ!……だが、皆は何も答えない。だからこそ直感する。この沈黙の意味は……っ!
「畜生ッ!……父さん教えてくれよ!鬼隠しを行ってるのは誰なんだよ!オヤシロさまでも、レナの言う宇宙人でもないってんなら、一体犯人は誰なんだよ!」
「……三四ちゃんが何年も調べた結果分かったのは……鬼隠しの犯人は……

───村の……本当の守り神だ。」
 ……本当の、守り神……?
 引っ掛かる物言いだった。この村の守り神は、本当も何もオヤシロさまのはず。親父の口調はまるで、オヤシロさま以外の神がいると言っている様な……
「ああ。オヤシロさまがこの村に光臨したのは、村人達が鬼に襲われ、恐怖に怯えていた時……分かるかい?つまりオヤシロさまは、最初から村人と一緒にいた訳ではなかったんだ。」
「……!」
 言われてみればその通りだった。遥か昔に光臨し、今尚村の守り神として崇められているから気付かなかったが……オヤシロさまが、いや鬼達が襲いに来る前の時代にも、この村は村としてのコミュニティを形成していたはずなのだ。つまり……いるのだ。オヤシロさま以外の守り神が……!!
「本当に神かどうかまでは納得できないけど、オヤシロさまの光臨を快く思ってなかった村人がいたかもしれないってくらいなら、わかったかな。」
 親父も魅音の意見を認める。どうやら鷹野さんも同じ様な事を言っていたらしい。
「その方々もオヤシロさまに助けて頂いたのでしょう?」
「沙都子ちゃん。オヤシロさまは鬼をも許している。自分達を襲ってきた奴をも許そうと言ったんだ。鬼にも事情があったにせよ、それでも許せない人から見れば、オヤシロさまのご判断はとても納得のいくものではない。それに、鬼と人とが共存する為に多くの決まり事が生まれた。これまで人間達だけで生活していた頃にはなかった厳しい戒律。破った者は厳しく罰せられるとあっては、反感も尚更だろう。」
 じゃあ鬼隠しは……?俺がこの疑問を口にするより先に、梨花ちゃんが話し出していた。
「……確かに決まり事を作ったのはオヤシロさまなのですが、与える罰の大きさについては、Kが言っていた通り、昔の村人だったのです。痕が残るほどの罰までは、オヤシロさまは求めてはいませんです。鬼隠しも、きっと冤罪なのですよ。オヤシロさまはそんなの、絶対望んでないのです。」
「……。」
 鬼隠しは、今風に言うと原因不明の失踪事件だ。犯人がオヤシロさまの仕業だと意図的に流したのかもしれないし、恐れを抱いた村人達が、超常現象を起こすものはオヤシロさま以外になく、神の怒りだと短絡的に解釈したのかもしれない。いずれにせよ、憎いオヤシロさまに罪をなすりつけられるのだから、さぞ都合が良かったに違いない。
「そう言えばKは、本当の自由、真のフリーダムって言っていたよね、よね?きっと、オヤシロさまの作った戒律を否定する事で、村人の自由を勝ち取ろうって考え方なんだと思うよ。」
「厳しい戒律からの脱却と言っていましたわ!きっとオヤシロさまの規律を滅茶苦茶にしようとするニセオヤシロさまの差し金ですわね!」
「でも本当の自由って、決まり事を取っ払うのとは違うはずだよ。Kは確か、やりたい事をやる、なりたいものになるって言っていたよ。それは単なるわがまま。良く言えば理想になるけど、それだけが自由を作るんじゃない。Kのやり方は間違ってる!Kは同志とか言って、皆を自分の味方に引き込むつもりだよ!」
「……圭一。ボク達の意見は固まりましたですよ。全力でKを止めましょうです。」
「皆……力を貸してくれるか?」
 レナ、魅音、沙都子、梨花ちゃん。四人は俺の顔を見て頷いてくれた。
「良い仲間に出会えたな、圭一。父さんから、お前達にこれを託そうと思う。」
 親父は俺達に、五つの色の異なる掌くらいの大きさの宝石を見せた。
「お、おじさま!このかぁいいのは一体!?」
「Front Fieldが開発した“賢者の石”。さらに三四ちゃんの報告から、この土地の風土、気候に合うよう改良を施した。これを握り、『鬼着(おにちゃく)!』と叫ぶ事で……悪を成敗する竜騎士に化す事が出来る!」
「五色の変身アイテムか……分かったよ父さん!これを使ってKを懲らしめればいいんだな!」
 皆はそれぞれ石を掴む。レナは赤、魅音は緑、沙都子は黄色、梨花ちゃんは青い石を掴んだ。最後に残ったのは黒い石だが……。
「圭一は、これを信用できる人に渡してくれ。決して自分で使ってはいけないぞ。」
「ど、どうしてだよ!Kは俺の偽者なんだ!仲間に俺を倒せなんて言えないよ!」
 そう言えば部活で毎日倒されているのだが、それとこれとは話が違う。
「とにかく、あいつは俺が倒す!だから、この竜騎士の力って奴を貸してくれよ!」
「圭一の気持ちは分かる。しかし……それを使うという事は、竜騎士に変身するという事なんだ……。」
「俺じゃ竜騎士にはなれないってのかよ!」
「そうじゃない圭一!ただ、その竜騎士のデザインが……圭一にも分かるように例えると、ああアレだ。エンジェルモートの制服に良く似ているんだ。」
「……。」×4。
「なんでそんな恰好になってんだあああああ!!」
「父さんに聞くな!確かに作ったのは父さんさ!だがこれは先生と三四ちゃんの調査から、最もこの土地のコンディションに合った形状が、たまたまあんな恰好だったというだけの話だ!父さんは先生を信じている!その竜騎士の力に間違いはない!問題があるとすれば、それをまとう者の精神!圭一はこれを着て、文字通り圭一自信に勝てるのか!?」
「うっ……。」
 流石に好き好んで女装したいとは思わないが、それを差し置いても父さんが熱弁を振るうほどの力は魅力的だ。本当にヤバくなった時の切り札として、とっておくのが賢明だろう。第一、渡そうにもそんな恰好が許される相手がいなさそうだ。
「あ、知恵先生なんてどうかな、どうかな?カレー大好きだから、ハマリ役だと思うな!思うな!」
「確かに、黄色い戦士が似合うかもね。黄色といえばカレーだからねぇ。」
「古いぜレナに魅音!最新の、昭和58年のイエローの好物はカレーじゃない!ラーメンなんだ!」
「……そんなリアルな情報は結構なのです。」
 その時、アトリエ……ていうか基地?にサイレンが鳴り響いた。続けて、モニターの一つに写ったのは……知恵先生!?
「すみません、しくじりました……まさか、既に四人が揃っているとは。」
「知恵先生、ご無事ですか!?」
「……竜宮さん?」
 先生は俺達がここにいる事に驚いている様子だったが、親父が事情を説明した事をすぐに理解した。兎に角、先生が無事でよかった。
「本当にすみません。皆さんを巻き込みたくなかったので、誰にもこの話は出来ませんでしたが、こうなってしまっては……。」
「いえ、話さなかったお陰で、圭一のコピーに我々の掴んでいる情報を奪われずに済みました。不幸中の幸いです。」
 そういえば、Kは昨日までは俺だったんだから、俺が事情を知っていれば、Kが生まれた時点で機密が漏洩していたはずだ。しかし、納得がいかない。
「父さん、村人のコピーについて何か知ってるんじゃ……?」
「ああ……三四ちゃんの調べでは、過去にも村人が同じ時に何人も見つかる事件は度々あったらしい。そしてそれは、概ね鬼隠しの起きた時期と重なる。ここからは仮説になるんだが、おそらく鬼隠しは、コピーを生み出すための依り代を集めるものなんだと思う。」
「……!」
 コピーを生み出すには、一人につき村人一人分の肉体が必要だってのか!?そうか。Kは確か、事件はもう起きないと言っていた。既に頭数を揃えたという事か?連続怪死事件で鬼隠しにあったのは四人。……待てよ?さっき知恵先生も四人がどうのと言っていた。だが、この仮説が正しいのだとすると、Kは……誰なんだ?
「知恵先生!それで圭ちゃんの偽者は何処へ!?」
「村の男の方々が学校へ集まっています。おそらく、その近くに……ぐっ!」
「……知恵、ひとまず体制を整えるのですよ。そこはボク達に任せて欲しいのです。」
「梨花の言う通りですわ!皆様方、行きますわよ!」
「よし皆!もう一度車に乗り込め!」

 学校のグラウンドは、Kによって心を開放されたらしい多くの人たちで埋め尽くされていた。
「ところで、何で男の人ばかりなんだろね、魅ぃちゃん。」
「Kは誰かさんと同じく、男に好かれるタイプなのかねえ。」
 ばっちり聞こえてるぜ我らが部長。
「父さんは知恵先生を探してくれ!先生まで変な神様の生贄にされてたまるか!」
 父さんは俺達にこの場を任せ、車を発進させた。さて、グラウンドの男達は、何やら神を讃える呪いを唱えているらしい。その中心、学校の屋根の上に四つの影!
「やあやあ!僕の名はトミー!自由のカメラマンさ!」
「さてさて皆さん。私はドクター・イリー。真実の愛を知る男。」
「どうもどうも。自由の味方クラウド、以後お見知りおきを。」
「よくよく聞けよ!俺の名はK!何物にも縛られない永遠の自由の求道者だ!」
「「「「我等!!ソウルブラザー!!!!」」」」
 ソウルブラザーはそれぞれ思い思いのポーズを決めている。ただし、カッコイイのかどうか俺にはよく分からない。っていうか凄まじい面子だな。
「圭一さん!あちらを御覧なさいませ!」
 沙都子の示す方に目を向けると……あれは!磔にされた、富竹さんと監督と大石さん!?やはり屋根にいる連中はコピーか!
「さあさあ圭一。自由の徒となって生きる決心はついたのかい?」
「K!お前の言う自由は偽者だ!自分の欲望に任せて生きるだけが自由じゃない!」
「やれやれ……クールになれよ前原圭一。欲望を抑えたって苦しいだろ?欲望を否定するのは自分を否定するって事さ。そこに磔になってる三人の様に……だがかなしいかな、仕方のない事でもあった。村の掟が絶対だったからな。だからそんなもの、俺達が粉々にしてやる!さあ来い!俺の手を掴め圭一!」
「ごちゃごちゃうるせえよ!自分のやりたいように出来ないのを村の規律の所為にしても、根本的な解決にはならない!てめえに覚悟があるんなら、規律があろうとなかろうと、他人に何と言われようと、自分の道を進め!但しそれはてめえの道だ!他人に強要するな!他人の所為にしてんじゃねえ!」
「前原さんの言う通りです!」
 磔にされた大石さんが叫ぶ。
「そうだ!自由とは自分で見つけるものだ!他人に与えられるものじゃない!」
「それに、どんな状況にだって、自由は探せば必ずあるのです!それを怠り外にばかり目を向けていても、本当の自由は見つからない!」
 富竹さん……監督も……。
「黙れ黙れッ!皆、あんな連中の言う事なんて真に受けちゃいけない!」
 分が悪くなったと思ったのか、トミーが声をあげる。
「そもそも!己の本心を隠して生きている様な人間など信用できません!本心のままに生きる私達の方が貴方達より本物らしい!そうでしょう?」
「いやいや、さっすがイリー!ごもっともですよ。富竹さんは本当に写したい対象を諦め、野鳥を撮ってごまかしている!入江の先生は不完全な愛でメイドさんの意義を貶めている、許せませんねえ。大石蔵人にいたっては、連続怪死事件を追う内に本当の目的を見失っている。そんな事でおやっさんの無念が晴れると思っていますかぁ?刑法だって邪魔ですよ?ぶっちめられませんからねえ。んっふっふ!」
「そうだそうだ!己の本心を偽り自由を否定する人間など新たな雛見沢には無用!自由の徒よ!その男達と前原圭一を始末しろ!」
「「「「オヤシロさまあああああああ!!!!」」」」
 まずい!Kの一声で村人達のスイッチが入った!
「圭一くん!ここはレナ達が食い止めるから、早くKのところへ行って!」
「おじさん達の優しさだよ。本命を譲ってあげよう。」
「本物が偽者に敗れないと、私達は信じていますわ!」
「……ふぁいと、おーなのです。」
 そしてレナ達四人は、俺の前に横一列に並び……賢者の石を構える。
「魅ぃちゃん!沙都子ちゃん!梨花ちゃん!」
「OKレナ!変わるよー!」
「お覚悟なさいませ!」
「……がたがたぶるぶる。」
 そして、誰一人本来の変身コードである“鬼着!”を叫ぶ事なく変身した。衣装が鎧へと変化していく際、何故か父さんのサークル名「Front Field」のロゴが皆の身体の周りをフラフープの様に回るという不思議な演出が入った。鎧は確かにエンジェルモートの制服に似ている(賢者の石を思い切り投げ捨てたくなる)が、それぞれ色違いなのだった。
「槍に宿すは紅蓮の炎!竜騎士レナ、なんだよ、だよ!」
 真紅の鎧に身を包んだレナが手にしているのは大型の槍。初めて見る姿なのに、何処か懐かしいのは何故だろう。
「刀に宿すは浄化の疾風!竜騎士魅音、参ッ上!」
 深緑の鎧は魅音だ。詩音の姿がダブるので違和感は少ないが、手にした刀は不自然過ぎた。せめて剣だろう。
「指輪に宿すは光速の電子!竜騎士沙都子、ですのよ!」
 沙都子の鎧はシグナルイエロー。得物が見えない代わりに、両手五指計十の指輪が煌いている。メリケンみたいだ。
「鈴に宿すは宇宙の真理、猫騎士梨花、なのですよ。」
 青と紺の中間くらいの色の鎧をまとう梨花ちゃんは、明らかに「竜騎士」とは言わなかった。
「はう~、皆かぁいいよ~?」
 こんな時になんだが、レナはいつも通りだ。或いは鎧がこのデザインなのは、レナをこの状態にする為ンな訳ないか。
「よし!ここはどれだけ敵を倒せるかで勝負しよう!勿論罰ゲーム付きでね!」
「はう!魅ぃちゃんそれ本当?よーし、レナが一番頑張って、圭一くんに罰ゲームを引いてもらうよー!」
 魅音の提案を聞いて、レナが敵陣に突っ込む。魅音の奴、レナの扱いが上手くなったな……って待てよ?この部活俺も参加してるのか?
「よーし、おじさんも負けないよー!」
 俺の心の叫びはこういう時に限って届かず、魅音は居合でもやるつもりなのか、納刀状態で構え、その場から動かない。代わりに少しエコーがかかった声で気を溜めているようだ。
「かぁ~、まぁ~、いぃ~、たぁ~……ちぃーっ!!」
 戦闘民族か!一瞬で抜かれた刃が巨大な衝撃波を生み、何人もの村人を巻き込んでいった。抜刀の音も刀を振るう音も聞こえなかったが、神速の剣という奴だろうか。
「音さえ切り裂くこの技の名前は“音切(おとぎり)”。そう!伝説の抜刀術、音切!」
 そうかい。音でも弟でも、何を切っても構わないが、相手はKに操られているだけの村人だという事は忘れないでくれ。……お、沙都子の姿が見えない。いつの間にか仕掛けたトラップで次々と敵を捕らえているが……あの指輪の効果は何なのだろう。電子がどうとか言っていたけど。
「をーっほっほっほ!トラップマスタースパークの完成ですわ!」
 沙都子といえばトラップであり是を除いたら沙都子はただの生意気娘に成り下がってしまうのだ。今の技名にしたって、トラップがなければただの、マスタースパー……………………
「私の電撃弾幕結界から逃れる術はございませんわ!ご覧遊ばせ!」
 弾幕関係ねえ!まあ今は近寄り難いからこれ以上のツッコミは危険だな。そういえば梨花ちゃんは?……はっ、既に梨花ちゃんの周りだけ空気が違っている。皆恵比須顔になってる。確か梨花ちゃんの武器は宇宙の神秘だっけ?まさか、「萌え」は宇宙の言葉だという事か!?ちなみに骨抜きになった皆さんは、それぞれ槍や衝撃波や弾幕の餌食になる。梨花ちゃんは磔の前に行き、大石さん達を開放する。
「おいおいまずいぞ!トミークラウドイリー!あの三人を早急に片付けろ!」
「「「アイアイサー!!」」」
 ソウルブラザー三人が、オリジナルの三人の前に並ぶ……互いの表情は険しい。
「なかなかどうして、案外てこずらせてくれますね。しかしこれで終わりです!」
「そうだそうだ!僕達は信じている!己の欲望に忠実になる事が、最大の力を生み出すと!」
「まだまだこれからですよ!トミー!イリー!今こそ三位一体攻撃で、反逆者どもを一網打尽です!」
 ソウルブラザーは奇妙なフォーメーションを組む。さすがというべきか息が合っていて……一分の隙もない。
「富竹さん!大石さん!こちらも参りましょう!」
「当然ですよ!欲望で刑事が勤まるかって事、教えてやりますよ!」
「自分の欲望には、僕は絶対に負けない!」
 富竹さん、大石さん、監督も三位一体の構えをとる。そして……
「「「自由こそ正義!空虚なる理性よ立ち去れええええええ!!!」」」
「「「己が欲望に打ち勝ってこそ、僕達は成長するんだああああ!!!」」」
 激突!……しかし衝突する二つの力は拮抗し、決着はつかない。巨大な力が迸り、辺り一体を衝撃で包む。彼らの側には梨花ちゃんがいたが、竜騎士の力を持ってしてもこの力に割り込む事は出来ないらしく、手を拱いている。その時、梨花ちゃんの背後に男の影!あ、危ない!……あれ?あの人、大石さんの側にいた刑事さん……?
「……熊谷。どうしてこんなところへ?」
 熊谷さんは梨花ちゃんに向かって頷いて……力のぶつかり合う中へ駆け出した。
「熊ちゃん!?ここは危険です!引き返して下さい!」
「出来ません!自分は警察官っす!義を見てせざるは勇なきなり!人の為に自分に何か出来るなら、力になりたいんす!」
「……熊ちゃん。」
「大丈夫っすよ。自分の知っている大石さんは、こんな所じゃ負けません。……うおおおおおおおお!!」
 熊谷さんの加勢により、力の均衡が破られる!
「「「オヤシロさまああああああ!!!」」」
 ソウルブラザーは一気に押し負けられ、大爆発よろしく激しく土煙が舞う……やった!
「畜生畜生!ソウルブラザーがやられちまうなんて!」
 屋根の上を見ると、Kが舌打ちして屋内に入って行くのが見えた……逃がすか!村人達が俺を阻むが、これは俺とKの戦い!邪魔立てはさせない!自由の徒の襲撃をかわし、大柄な奴の肩を踏み台にして屋根へと駆け上がる。Kはどこだ……物音のする方を追いかける。辿り着いたのは俺達の教室。グラウンドの喧騒がひどく遠くに感じられる空間に佇むKの右手に金属バット。
「ついに……ついに俺のところに来たな、前原圭一!」
 Kは敵意を剥き出しにしていた。そして俺は、一つの仮説に辿り着いていた。
「答えろK。お前は……北条悟史なのか?」
 ソウルブラザーの構成は、Kを除く三人が大人だ。鬼隠しで消えた四人の内、三人もまた大人なのだ。もしソウルブラザーが鬼隠しで集めた人達から作られたなら、Kを作るのに適当な肉体は、俺と年齢が変わらない人物……北条悟史ではないか。
「違う違う。俺はお前だ。前原圭一だ。」
 確かに外見や性格は俺のコピーなのかもしれないが、その肉体はどうやって生まれたというのか。
「……話になんねえな。お前を戦わせてるオヤシロさまと話をさせてくれ。」
「駄目だ駄目だ!」
 Kの感情が爆発する。
「やいやいてめえ!自由を求めないくせして、オヤシロさまに顔向けしようなんて虫が良過ぎるんだよ!」
「話も出来ないなら伝えておいてくれ。自由だか何だか知らねえが、そんなもんの為に村人を、俺達の仲間を犠牲にするってんなら、俺は守り神だと認めないし信用もしないとな。」
「黙れ黙れ黙れ黙れェッ!」
「K。お前も俺の一部と言うなら、部活のルールくらい知ってるよな。俺達にとって、自由ってのは勝ち取るもんだ。神も王も英雄もいない。あるのはルールだけだ。勝った奴が全てだって言うな!」
「……。」
 Kは俺の言葉を理解したらしく、バットを正眼に構える。その目に迷いは感じられない。
「会則第二条、勝つ為には最大限の努力、か。」
「そうだそうだ!お前に武器がなくとも、こっちにはある!卑怯だなんて言うなよ?」
「その言葉、そっくり返すぜ!鬼着ゥッ!!」
 俺のシャウトを合図に賢者の石が輝く。漆黒の鎧が俺を包むと、底知れぬパワーが四肢に漲ってくる。服がそのまま変形するためか、心配だったサイズもジャストフィットだ!Kは俺の変身を驚きのまま見つめ、何故か中腰になり、次第に前屈みに……
「ってアホかあああああ!!」
 俺の張り手が顔面にクリーンヒットし、Kは机を巻き込みながら壁に激突する……が、顔色一つ変えずに起き上がった。
「やられたやられたァ。だが、散っていった他のソウルブラザーが俺に力を貸してくれる!俺はオヤシロさまの切り札だぜ!うおおおお!オヤシロさまああああ!!」
 Kの戦闘力が上がっている!?……上等だぜ!このくらいでハンデになったと思うなよ!……しかし、なんで変身した後皆武器持ってたのに、俺にはないんだ?……ハズレ?もしかして、変身途中でツッコミ入れたから、これ不完全な状態なのか?
「おらおら!見せてみろ竜騎士の力を!」
 くそっ!竜騎士の力を完全に引き出せない状態では、守り神の力を借りたKの前に成す術がない!変幻自在のスイングを捉える事もままならない、だが諦めてたまるか!何か、使えそうなものはないか……?
「そらそらどうしたっ!」
 Kのバットを間一髪でかわしたところで、身体が壁にぶつかる。いつの間にか壁際に寄せられていたか。待てよ?こいつはただの壁じゃない。ロッカー、魅音が使ってるロッカーだ!しめた、この中には……俺はロッカーに手を入れ、掴んだ物をKに投げつけ、向こうが怯んだ隙に渾身の体当たりを見舞う。要は相手の武器を封じれば対等なのだ。Kが体制を崩している間にロッカーの中をうかがう。しかし、遊びならまだしも……戦闘力が向上しているK相手に効果をあげられそうなものなど見当たらなかった。
「なかなか味な真似してくれるじゃねえか。だが、今の俺にはどんな攻撃も通用しないぜ!」
「……。」
 俺はロッカーから向き直り、Kを見据える。
「おいおい、観念しましたってか?」
「ばか言え。空手で迎えるのも俺の自由だろ。そっちこそ、丸腰の俺をどう対処しても自由だぜ?」
「!!」
 Kの顔が紅潮する。……狙い通りだ。奴は自由を特別なものだと考えている。そしてそれは俺にはなく、自分達にだけ許された特権だと感じている。
「K。お前は自由になったら、最初に何をするんだ?お前は、前原圭一は。」
「お、おいおい……決まってるだろ。いつも罰ゲームに散々やられてきたんだ。まずはその報復だろ。」
「なら、その次は何をするんだ?それが終わったら?その次は何をするんだ?」
「……。」


 既にKは、俺とは違う顔になっていた。Kはうめき声以外の言葉を発せないままに崩れていく。
 確かに俺には、こうしたいとかこうなりたいとかいう気持ちもあった。だからって、何でもかんでも手に入れようなんて思わなかった。Kに言わせればそれこそが願いを諦める事につながり、大罪になるのかもしれないが……欲しいものが全て手に入るのが、本当に幸せなのだろうか。難しい事はよく分からないが、たとえ劣勢であっても、真剣勝負であれば俺は熱くなれた。Kが言ったように、それは本当にちっぽけかもしれないけれど、きっと、幸せって奴なんだと思う。
 Kは敗れた。Kだけじゃない。ソウルブラザーも敗れた。結局は同じ現在と過去を持つ俺や富竹さんたちを倒して、自由になろうとしたんだろう。K達は、自由に執着し過ぎた。他でもない、自由を求める気持ちこそが……彼らを束縛していたのだ。
「自由の徒なんて偽りだ。お前も見たはずだ。ソウルブラザーが敗れたのを。結局は同じ現在と過去を持つ富竹さん達を倒す事で、自由になろうとしたんだろ?お前も、俺を倒す事で前原圭一という運命を打ち破ろうとしたんだ。……お前ら、自由に執着し過ぎたんだよ。他でもない、自由を求める気持ちこそが、お前らを束縛しちまってたんだ。」
「違う違う!勝手に自由を騙るな!自由はオヤシロさまが与えてくださる神聖なものなんだ!己の欲望を受け容れたものが享受出来る尊いものなんだ!」
「上等!だったら俺を倒して証明して見せろ!」
 Kが飛び掛る。振り下ろされる一撃には何の躊躇もない。そうKに迷いはない。それは、自分の信じる道を進むという意志、覚悟の表れ。気持ちの強さの表れだ。こいつに勝つには、Kの気持ちより更に強い意志を俺が持たなくてはならない。……俺は逃げも隠れもしない!全身での一撃を受け止める!!
「ぐっ……!!」
 それは半端な痛みではない。耐えるのが嫌になったり、気を失いそうになるくらいに痛く、辛い。これがKの思い。自由を手にしたいという気持ちの強さ。それでも……俺は負けない、負けられない!
 素早く手を伸ばし、Kの胸倉を掴んで引き寄せる。これだけの至近距離なら、武器があろうがなかろうが関係ない!
「やいやい圭一!てめえ初めからこのつもりで、武器を手にしなかったのか!」
「ああ。目の前の物を掴むには、他の物を手放さなきゃならない時もある。一か八かだったが、これで終わりだ!」
 俺の願い。こいつに勝つ!勝って、仲間の悟史を取り戻す!その思いだけを強く念じ、本気の頭突きをくれてやるっ!
 ガアアアアアアアアアン!!!
 ……俺は全てを使い果たした。余力も使い切ってしまい、Kを手放した挙句自分も床に倒れこんでしまった。これでKを仕留められていなければ、俺は確実に負ける。しかしそれを悔いても仕方ない。俺は全力を尽くした。これ以上は仕様がない。言葉は悪いが、諦めもつくってところだ。……今頃になって、さっきKにやられたダメージが痛む。意識が遠のく……。

「圭一くん!起きて、圭一くん!」
 ……レナ?はっ、皆無事か?
「私達の完全勝利!今、富竹さん達が村の皆を診療所に運んでる。男勢は皆Kに従ってたからね、男手が足りなくて。」
「圭一くんも頑張ってくれたんだね、だね!」
 いてて、そうだ、Kは?レナが教室の一角を示す。その先には沙都子と梨花ちゃんが座っていて、更に向こうに誰かが倒れているのが見える。
「……沙都子、悟史を運びましょうです。」
「そうですわね、早く元気になって頂きませんと。まったく、帰って来るなり世話のかかるにーにーですこと。」
 やはりKの正体は悟史か。沙都子達は悟史を外まで運んでいった。入れ替わりに、親父が教室に入って来た。その後ろには知恵先生の姿も見える。……本当に、皆無事だったんだな。
「圭一。それに皆。村を救ってくれて本当にありがとう。」
「元々は私達だけで解決させなければなりませんでした。皆さんには、本当に申し訳ないと思っています。」
「そんな、頭を上げて下さいよ先生。父さんも!」
「あはは、村の一大事に不謹慎ですけど、こういう大騒ぎは望むところですよ。変身も出来たし。」
「……魅ぃちゃん。」
「あらあら、まったく。」
 レナと知恵先生が白い目で魅音を見る。確かに不謹慎だが、俺も確かに少し楽しかったから、あまり人の事は言えないな。しかし、さっきから違和感が拭えないのは何故だろう。
「父さん達は、皆を運ぶ手伝いに戻るよ。」
「そろそろ戻った方がよろしいですね。前原くんは歩けますか?」
 ……!
「どしたの圭ちゃん?」
「どこか痛いのかな、かな?」
「……大丈夫。心配性だな、皆も。」
 俺が強がって見せると、親父と知恵先生は首を傾げつつも教室を後にした。
「二人とも。ソウルブラザーは全員、これまでの鬼隠しの被害者達だったのか?」
「?うん。四人ともそうだったみたい。」
「なら、その四人以外に、最近鬼隠しに遭った奴っているのか?」
「何言ってんの、って、あそっか。昨日お祭にいたのは圭ちゃんじゃなくてKだったんだっけ。」
 ……!!失念していた!俺がいなかっただけで、祭は昨日もあったんだ!昨夜行方不明になった人物がいる。鷹野さんだ。つまり、コピーを生み出す依り代がまだ余っているんだ!
 俺は教室を飛び出した。しかし、いくら外を見回しても、親父も知恵先生も見当たらない……くそっ!
「圭一くん!急に動いて、どうしたのかな、かな?」
「レナ!魅音!先生だ!今の先生はコピー、昔の守り神の尖兵だ!」
「「ええ!?」」
 最悪だ!知恵先生は機密を知っているどころか、あの姿なら父さんの機関に接触できる……内部崩壊だってあり得る!
 戦いは、まだ終わっちゃいない……!!
                      了
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